学習塾・個人塾の経営戦略を発信するumaです。北海道で学習塾勤務10年、ワンオペ個別指導塾15年やっています。独立して悠々自適な生活を手に入れました。
今日は個人塾の正社員採用についてのお話しです。
学習塾の多店舗経営に欠かせない「正社員の採用」
個人塾をやっていて、生徒数が順調に伸びてきたらやはり「教室を増やそう!」「社員を増やそう!」となりますよね。売上が伸びていると気持ちも大きくなり、「自分がやっていることは正しい」「地域にウケている」という確信が生まれます。
そして教室を増やすなら、当然信頼できる社員を雇って新しい教室を任せたい、という流れになりますよね。
そんなときこそ考えていただきたい「正社員を雇うコスト」です。雇ってから「うまくいかないから辞めてもらう」というわけにはいきません。十分な事前考察を。
意外と盲点になる「正社員のコスト」とは
正社員のコストといえば、もちろん人件費。これは単純に「月給」だけではなく、
①健康保険(給料の約10~12%を労使で折半)
②厚生年金(給料の約18%を労使で折半)
③雇用保険(給料の約0.6%が会社負担)
④労災保険(給料の約0.3%)
が支給額に加えて人件費(法定福利費)となります。
ただ、それ以外に考えなければいけないコストとして以下があげられます。
①年次有給(入社半年から付与、毎年増え最大で年間20日)
②賞与(支給額には社保もかかる)
③退職金積立(制度がある会社のみ)
④労務コスト(募集・採用・給与や社保・源泉徴収計算・有休や勤務時間管理・給与振込と明細作成・賞与計算や昇給の社員への説明・預り金の法定調書作成や支払い作業・退職時の職安提出書類作成など)
とにかくお金と手間がかかります。
とくに④は、すべてを会社代表である自分がやればよいですが時間がかかりすぎます。結局バックオフィスに1人パートを雇う必要があります。書類関係や入金作業はダブルチェックが必要ですし、結局自分がやらざるをえない・・・人を雇えば雇うほど「塾の仕事」ではない仕事が増えます。
金銭的コストと時間コストがかかり、それらは各教室の売上にのしかかってきます。こうなると、もはや「あれ?何のために独立したんだっけ?」という気持ちになってしまいませんか?
会社という仕組みをつくることが楽しい・好きだという人には向いていますが、大半の「他塾からの独立開業組」にとってはしんどい作業のように思えます。
育児休業も考えた人員配置が必要
育児休業を取得する社員を見越して、会社側がしっかり人員配置しなければなりません。ただ、十分なアルバイト講師でシフトを回すことができても、大半の塾では「1教室1名の正社員+アルバイト講師」でしょうから、正社員が育休をとると教室長業務を別の誰かがやらなければなりません。授業はアルバイト講師ができても、教室長業務は誰がやればよいでしょうか?
他教室の教室長?キャパ的に無理ですよね。
やっぱり会社代表の自分がやらねば・・・
どういう体制をとるか、前もって決めておかなければいけません。少なくとも「育休はとれません!」など法令違反をした瞬間、会社が立ちいかなくなります(優秀な社員の流出だけではなく、労基署の指導など面倒が増えます)。
社員が「突然辞める」リスク
学習塾に限らず、どんな会社でも社員が「突然辞める」ことがあります。理由はさまざまですが、どんなに会社で「2カ月前までに教えて」と規定していても、法的にはそのような縛りはありませんし、体調を理由に退職願を出されては引き止めることもできません。
また、この塾業界でよくあるのは「社員が退職と同時に生徒を引き抜いて、近隣に教室を立ち上げる(または他塾に移籍する)」ケースです。悲しいことですが、こんな小さな市場で訴訟沙汰にしてもエネルギーもコストも無駄遣いです。
「自分は見る目がある!」「そんなとんでもないやつを採用しない!」と自信がある方も多いと思います。しかし「人を雇う」というのは現実問題として、そのようなリスクを背負い最終的にはすべて「会社代表が責任をとる」ことです。あらためて、会社をつくり人を雇って運営していくことは・・・本当に大変なことだと思います。
売上ではなく利益がスケールするかを考察
上記のコストを吹き飛ばすほど売上が伸びているなら大丈夫です。一方で人件費も伸びていきますから、きちんと「利益部分が伸びる仕組み」になっているか、十分検証しましょう。
せっかく教室数が増えているのに、利益が減ってしまっては本末転倒です。それでは教室運営も、どんなにすばらしいシステムの塾も「兵糧が尽きて」終わってしまいます。
正社員を雇い、法人経営に失敗した僕の中での結論は「結局、社員は雇わずワンオペがいいよ」です。ただ、会社をスケールしていきたい!という野心をお持ちの方は、ぜひ上記の点を考慮した仕組みづくりを!
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個人事業主を長くやっていると、どうしても「我流」になり、気をつけないと「独善的」になってしまいます。ときどき他所の経営者の知恵・経験に触れ、知識の棚卸をするのって大切ですよね。
前向きな刺激にもなるし、良いものはどんどん取り入れつつ、行動の総点検をしながら軌道修正をする・・・ひとに会って話を聞くのもいいですが、やっぱり読書は手軽だし時間を効率的に使えてイイですよね。